血管シリーズ―血液について No.1

血液の半分は液体、半分は細胞でできている

血液はご存知のように私たちが生きていく上で非常に大切な役割を果たしています。それで今回は血液の成分について見てみたいと思います。

血液は、水を主成分とする液体部分と、血液細胞が混ざり合ってできています。血液細胞には、赤血球、血小板、白血球があります。

液体部分の血漿にはタンパク質が含まれます

採取した血液に凝固を防ぐ薬剤を加えて遠心分離機にかけると、3層に分かれるようです。一番上は黄色っぽい透明な液体で、次に薄い灰(かい)白色(はくしょく)の層ができ、一番下は赤い層となるようです。最上層の黄色っぽい液体が「血漿(けっしょう)」で、血液の約55%を占めているそうです。血漿以外は「血球成分(血液細胞)」と呼ぶようです。

血漿の約90%以上は水分で、次いでタンパク質が7%程度含まれています。その他、脂質、糖質、アミノ酸、無機塩類、ホルモンなどが含まれています。血漿タンパク質は、アルブミンとグロブリンに大きく区分することができます。アルブミンは、血液浸透圧を維持し、血液と細胞との物質交換に深くかかわっており、グロブリンは抗体の材料となるもので、免疫にかかわります。

1μLの血液に約500万個の赤血球が含まれる

血球成分は血液の約45%を占めており、赤血球、白血球、血小板があります。

灰白色の薄い層を作るのは、白血球と血小板です。白血球の役割は細菌などの異物から体を守る為に働く細胞で、好中球、リンパ球、単球など、いくつかの種類があります。細菌感染で白血球が異常に増えると、この灰白色の相賀敦子なるのが観察できます。

血小板は最も小さな血球成分です。血管が傷ついて出血した時には、血液を凝固させて止血する役割を持ちます。

血球成分の中でもっとも多いのが赤血球です。成人の場合、1μL(1ミクロンリットル)の血液中に、赤血球がおよそ500万個も含まれています。赤血球は比重が重く、遠心分離機にかけると、一番下に沈んで赤い層を形成します。赤血球の中のヘモグロビンというタンパク質が、酸素を全身に送り届けています。これらの血球成分はすべて骨髄で作られています。骨髄の「多能性造血幹細胞」という細胞から、赤血球や白血球、血小板が分化して血液中に放出されます。

 

血漿の仕組みと働きについて

血漿は水とタンパク質、電解質でできている

血漿中のタンパク質が脂溶性物質を運ぶ

血漿タンパク質には様々な働きがある。血漿タンパク質の60%を占めるアルブミンは、血液量を一定に維持しています。アルブミンは、血管内に多く、血管外には少ない為濃度を均等にしようとし、血管内に水分を引き込む力「膠質浸透圧(こうしつしんとうあつ)」が生じます。このように血管内に水分を引き込む力がある事により血液量が一定に保たれます。

また、脂溶性物質の運搬という重要な働きもしています。水に溶けない脂溶性物質は、そのままでは血液に乗ることができない為、水によくなじむアルブミンが脂溶性物質と結合して血液に乗ることにより必要な細胞まで届ける事ができます。脂質ビタミンなどの栄養素のほか、ホルモン、酵素、薬物の運搬も行っています。

もう一つの主要なたんぱく質であるグロブリンは、血液の粘性調節などに関わっています。

血漿は海水に似たイオン組成でできている

血漿にはイオン(電解質)が溶け込んでいます。イオンとは、水に溶けると電気を通す性質をもつ物質の事で、プラスの電気を帯びた陽イオンと、マイナスの電気を帯びた陰イオンに分けられます。

血漿のイオン組成は組織間を満たす間質液と非常によく似ています。血漿と間質液は同じ細胞外液であり、常に混ざり合い物質交換を行っているので非常によく似ています。なお、海水は血漿とよく似たイオン組成を示しています。

イオンは、体液の酸性度とアルカリ度のバランス(水素イオン濃度)に深くかかわっています。体内のあらゆる代謝は水素イオン濃度に影響されるため、血液の水素イオン濃度はPH7.4±0.05の非常に狭い範囲内に保たれています。これを「酸塩基平衡(さんえんきへいこう)」といい腎臓や肺、血液の働きにより厳密にコントロールされているようです。

 

血漿タンパク質には4つの役割がある

  1. 血液量を一定に保つ
    分子の大きいアルブミンは毛細血管の壁の隙間をとることができない為血管内に多く、血管外に少ない。両方の濃度を均等にするため血管内に水分を引き込む力が生じる。これが膠質浸透圧で血液量を一定に保つのに役立ちます。なお、アルブミンの減少によりこの機能が低下し、血管外の水分が増え過ぎた状態が、むくみです。
  2. 血液の粘性を高める
    血漿タンパク質のうち特にグロブリンは、免疫反応などに関わります。これらのタンパク質が増えると、血液の粘性(粘土)が高まります。なお、血管の直径や赤血球の量なども、血液の粘性に関わります
  3. 血液中の水素イオン(H⁺)を調節
    タンパク質を構成するアミノ酸は、H⁺を吸収しやすい。代謝の過程で生じたH⁺を吸収して、水素イオン濃度を調整している。(血液の緩衝作用)
  4. 栄養素やホルモンなどを運ぶ
    脂質や一部のビタミンなど、水に溶けない脂溶性の栄養素は、血漿タンパク質と結合すことにより血流に乗ります。例えば中性脂肪(トリセリグリド)やコレステロールは、親水性のタンパク質に包まれることでリポ蛋白となり、全身の細胞に運ばれます。脂溶性のホルモンも、血漿タンパク質と結合して標的臓器に届けられます。
 
赤血球の仕組みと働きについて

赤血球は表面積が大きくガス交換しやすい

赤血球は細胞膜、細胞質だけのシンプルな構造

血球成分の大半を占めるのが赤血球です。赤血球は小型の円盤形で両面の中央がへこんでいます。へこみがあるぶん表面積が増えガス向寒の候率がアップします。赤血球にはがなく、ミトコンドリアなどの細胞内小器官もありません。細胞質とそれを包む細胞膜だけで構成されており、内部には酸素と結合する「ヘモグロビン」というタンパク質が詰まっています。

また、細胞膜の「膜骨格」も特徴的です。赤血球の細胞膜は裏側から網状のタンパク質で支えられており、高い柔軟性と復元性を持っています。このため赤血球は非常に細い毛細血管でも変形して通り抜けて元の形に戻ることができるのです。赤血球は余分なものを持たず、酸素を全身に運搬するという目的にかなった構造となっています。

赤血球は酸素を使わずにエネルギーを得る

通常細胞はまず、「嫌気的解糖」により少量のエネルギーを得ます。嫌気的解糖とは、酸素を使わずに細胞質でグルコースを分解してエネルギー[(ATP)アデノシン三リン酸]を得ることができます。その後、嫌気的解糖で生じたピルビン酸⇒(生体内でブドウ糖が分解して生じる物質代謝の重要な中間化合物)という物質がピルビン酸という物質がミトコンドリアに入り、大量のATPを効率的に生成します。

赤血球はミトコンドリアを持たない為嫌気的解糖のみで少量のエネルギーを得ています。得られたエネルギーは赤血球の膜骨格の維持などに用いられています。

 

赤血球の基本構造

直径7~8μm、厚さ2μⅿの円盤型の細胞です。
両面にへこみがあり核を持たない。
赤血球は核がなく少しへこんでいるためガス向寒の候率が高くなります。

血液の赤は、血色素ヘモグロビンに酸素が結合し赤くなります

細胞に不可欠な酸素は水に溶けにくい性質を持っています。この酸素を全身に運んでくれる主役が赤血球内にあるヘモグロビンなのです。ヘモグロビンは複雑な立体構造を作る「グロビン蛋白」「ヘム鉄」を含む成分から構成されています。

細胞の代謝で生じた二酸化炭素は赤血球内に入ると酵素の働きにより、水素イオン重炭酸イオンに分けられます。水素イオンはヘモグロビンに吸収され、重炭酸イオンは血漿中に排出され肺まで運ばれます。肺に到達すると血漿中の重炭酸イオンは再び赤血球内に取り込まれます。そして酸素の働きで重炭酸イオンと水素イオンから二酸化炭素が作られ、肺胞を介して体外に排出されます。一方でヘモグロビンは肺胞から酸素を取り込み、酸素化ヘモグロビンとなります。ヘムの中心にある鉄が酸素と結合するのです。するとヘモグロビンは赤色(動脈血の色)になります。このことから「血色素」とも呼ばれています。

〈赤血球内のヘモグロビンが酸素と結びつくと鮮やかな赤となり、これが動脈血の色です。反対に二酸化炭素が多い時は色がくすみます。〉